伝わるための「言葉えらび」

前回のブログの続きです。

 

誰かに、何かを伝えようとするときに、

10人に対しては10通りの「最適な伝え方」というものが存在するはず、

と、前回のブログに書きました。

 

今回は、他者に話をする際に「わかりやすく伝える方法」の基本をひとつ、ご紹介します。

 

 

 

伝える相手の「辞書」を、どれだけ把握できているか。

 

「私の辞書に不可能という文字はない。」とは、フランスのナポレオン=ボナパルトの言ですが、

(厳密には彼の言葉を和訳したものが名言として知られているわけですが)

 

かの大ナポレオンでなくとも、

誰もが、自分自身の頭の中に「辞書」を持っています

 

その「辞書」の中には、

自分が知っている「言葉」や、

その言葉にまつわる知識が入っているわけです。

 

 

「辞書」と言って、思い浮かべるのは、

『広辞苑』であったり『大辞林』であったり『大辞泉』であったりするでしょうが、

 

ここで重要なのが、

一人ひとりの頭の中の「辞書」は、

それらの、どれとも違う、「オリジナルの辞書」なのです。

 

 

当然、収録語数も違えば、

さらには一人の辞書の中でも、それぞれの言葉の説明の量、あるいや字の大きさまでも違う

そんな辞書をイメージしてみると良いかもしれません。

 

ある言葉については、

索引があったり、関連語も充実しているのに対して、

 

別の言葉は、

紙の隅の方に、小さく書いてある。

 

そんなことも、あるかもしれません。

 

 

 

そして、普通の紙の辞書と違うのは、

人の頭の中の辞書は、

日々、その内容が更新・改訂され続けている、というところです。

 

 

人が、誰かに話をしようとするときは、

自分の頭の中の辞書から、言葉を選んで話をするわけですから、

当然、自分の辞書の中にない言葉は、使うことができません。

 

逆に、

話を聞く側からすると、

自分の辞書にない言葉を聞いても、

その内容は理解できません。

 

 

ですから、

誰かに、何かを伝えようとする際は、

 

「相手の辞書にある言葉を使って話をする」ことが大切です。

 

さらに言うと、

「わかりやすい」話をするためには、

特に「相手の辞書に大きく載っている言葉」を使う必要があります。

 

 

どのようにして、「相手の辞書」の中身を知るか。

 

そんなことを言っても、

「頭の中の辞書」を、実際にのぞいて見ることはできませんから、

 

「どうやったら、相手の辞書の中にある言葉を使えるの?」

と思うかもしれません。

 

 

この疑問に対して、まず大切にして欲しいのが、

「相手の辞書の言葉を使おう」という意識を持つことです。

 

意識をするだけで、じゅうぶんな変化があります。

 

 

そしてもう一つ、

 

相手の辞書を知る手がかりは、

 

相手の「興味・関心」のありかを探す、ということです。

 

 

例えば、

サッカーが好きな子の場合、サッカーについての知識は豊富なはずです。

 

ですから、前回の「テストのルール」についても、「サッカーのルール」をもとに話をすることや、

Jリーグのチームの本拠地から、都道府県をはじめとする地理の理解を深めていくことができるかもしれません。

 

 

ところが、

サッカーについて、全く興味もなければ知識もない人に対して、

欧州プレミアリーグの話をしても、そこからの話は全く展開しないでしょう。

 

 

ですから、

伝えたいことを分かりやすく伝えるためには、

相手が、何に興味があって、どんなことをよく知っているのかを理解した上で、

「相手の辞書の言葉」を使って話をすることが大切です。

 

 

「相手の辞書の言葉」を知るためには、

その人が、ふだん話している言葉に耳を傾けることも大切でしょう。

 

なぜなら、その人が話している言葉というのは、

「100%、その人の辞書に載っている言葉」ということでもあるからです。

 

 

相手が興味を持っていることについて深く知ることも価値があります。

 

例えばお子さまに何かを伝えたい、と思った時に、

お子さまが興味があるものについて関心を持つことは、

「お子さまの頭の中の辞書」にある言葉を、自分の辞書にもダウンロードすることにつながるのです。

 

 

 

そして、話を伝える上で、気をつけないといけないことがもう一つあります。

 

それは、

自分の辞書と、相手の辞書に、同じ言葉が載っていたとしても、

その言葉の説明(定義)が、異なっている可能性がある、ということです。

 

 

とくに

「しっかり」「ちゃんと」といった表現や

「早い」「たくさん」といった程度を表す言葉や、

「頑張る」といった動詞なども、

 

ひとりひとりの持つ「言葉の意味(の範囲)」が明確ではない言葉です。

 

 

例えば、

「朝は早起きをしましょう。」

と伝えても、

 

「早起き」の定義が午前5時半の人もいれば、午前8時の人もいるわけで、

実際には、伝えたい内容が伝わっていない、ということにもなりかねません。

 

「朝は、6時には起きよう。」

とすれば、こうしたズレが生じることもありません。

 

 

特に、こうした曖昧な表現というのは、

簡単に「伝えた気分」になれる、とても使い勝手の良い言葉ですから、

ついつい、多用しがちです。

 

もし、自分の意図することを、誤解なく伝えたいと思ったら、

具体的な表現をするように心がけるか、

あとから、具体的な表現を付け加えるようにすると良いでしょう。

 

 

例えば、

「朝は早起きをするんだぞ。6時には目が覚めるように、眠くなくても夜の9時には寝るようにするといいよ。」

というようにです。

 

 

 

これらのことを意識することで、

「言ってることがよくわからない。」となったり、

「伝えたつもり」「分かったつもり」となることを、

防ぐことができます。

 

 

 

もっとも、

「言っていることがわかる」のと、

「実際にやってみる」というのは、また別の話です。

 

この点については、一筋縄ではいかないですが、

それでも、基本となる原理原則はあるでしょう。

 

次回は、そんな「言葉の提供の仕方」について、書いていきます。

 

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