学習を効果的に積み上げるために大切な「視点」
今日は、建国記念の日でお休みの方もいらしたことでしょう。
お子さまと、有意義な時間を過ごすことはできたでしょうか。
こうしたお休みの日も、
集中して学習に取り組むこともできれば素晴らしいですが、
あえて、机に向かってのお勉強は軽めに切り上げて、
外に出かけたりするなど、「生きた学び」を探しにいくのも良いですね。
お子さまにとっても、
お父さま、お母さまと過ごす時間には、新しい学びのきっかけが、たくさんあることでしょう。
本日は、学習を効果的に積み上げていく上で、大切な視点、ものの見方についてご紹介します。
この視点があるのと、無いのとでは、
授業で同じことを聞いても、
同じことを学んでも、
それが身に付く度合いが、大きく変わってくるのではないか、と考えています。
また、この視点は、
国語の文章題、とくに「物語文」をスムーズに読み解く上でも、
重要な視点でもあります。
学習をする上で、大切な視点とは、
ものごとの「因果関係」に着目する、ということです。
「因果関係」とは
「因果関係」とは、文字通り、
「原因」と「結果」をつなぐ関係のことです。
物事が起こるのには、必ずその「原因」があり、
反対に、ある出来事が原因となって、別の「結果」が起こっていきます。
ある出来事は、その後に起こる出来事の「原因」ともなれば、
同時に、それ自体が別の出来事の「結果」でもあります。
「原因」から「結果」が生まれ、
その「結果」が、また「原因」となって新たな「結果」を生む。
そうした「原因と結果の関係」が連綿と続いていくのが、私たちの日常を含めた、すべての出来事に共通して当てはまる法則でもあるのです。
因果関係の事例を確認するために、
以下の物語調の例文をもとに、
物語文を読んでいく上でのポイントとなる
・出来事
・登場人物の心情変化
・登場人物の言動
の流れを、この「因果関係」の視点で紐解いてみたいと思います。
例文)
タカシは、今朝、学校に遅刻をしてしまった。
枕元の目覚まし時計が、あってはならない時間を指していることに気がついたタカシが布団から飛び起きたのは、普段なら、もうとっくに家を出ているはずの時間だった。タカシは、「お母さん、ちゃんと起こしてよ。」とお母さんに文句を言ったが、そんなことを言ったところで、時間を巻き戻すことはできない。朝食も食べずにダッシュで学校に向かったものの、校門の前にたどり着いたちょうどその時、朝礼の始まりを告げるチャイムが無残にも鳴り響いた。
「もう朝の会は始まってるぞ。」
恐る恐る教室に入ったタカシに、大野先生の言葉が突き刺さった。
「さっさと席につきなさい。後で話があるから、放課後に職員室に来るように。」
と言われて、タカシは、うつむきながら椅子に座った。
サイアクだ。大野先生が「話がある」と言ったら、少なくとも30分は覚悟をしないといけない。この前なんか、うっかり宿題を忘れたせいで、放課後に延々とお説教を受けた。そして、反省文だ。ようやく解放されて、家に帰った時には、すっかり日が暮れていた。もう2度と、大野先生とのあの時間を過ごすまいと、かたく心に決めていたのに、今日、再びその日が来てしまうとは。「憂鬱な朝」というのは、今日のような日のことを言うのだろう。タカシは、「いっそのこと、このまま学校から逃げ出してしまいたい」とすら思った。
「お前、ヤバイな。また大野に怒られるなんて。」
朝の会が終わって、放心状態のタカシのところに、サトルがやってきて声をかけた。
「シケイセンコクだぞ、大野の「後で職員室に来なさい」は。」
サトルは、むしろこの事態を面白がっているのではないか、とタカシは思った。いつもタカシと一緒にイタズラをしているはずのサトルだが、なぜか、これまで一度も、大野先生に怒られたことはなかった。
「まあ、気にすんなって。台風は、通り過ぎるのを待つに限るのさ。それよりさ、お前、昨日あのゲームどこまで進んだ。おれ、3面のボスまで倒したぜ。」
「うそ、ぼくなんか、2時すぎまで粘ったけど、ボス戦が全然クリアできなくてさ。どうやってクリアしたの。なんかアイテム使ったの。」
タカシは、思わず身を乗り出した。サトルは、少し声をひそめて、
「実は、ちょっとしたコツがあってさ、今日、学校終わったら教えてやるからウチに来いよ。」
と言ったが、すぐに、
「あ、だめか、お前、放課後は大野との約束があるんだもんな。」
と付け加えてきた。
「大丈夫だって、お昼にもなったら、大野もそんなに怒ってないだろ。」
と、あっさりしているサトルの顔を見ながら、自分も、こんなふうにヨウリョウよく生きられたらな、とタカシは思った。
今どき、こんな先生も、なかなかいないでしょうが、
こんなお手製の例文をもとに、「因果関係」を考えていきたいと思います。
まず、「タカシが学校に遅刻した」という出来事があります。
これを、ひとつの「結果」とするのであれば、
その「原因」はなんでしょうか。
「タカシが学校に遅刻した」という「結果」の「原因」は、
「朝、寝坊をした(起きることができなかった)」ことです。
また、「タカシが学校に遅刻した」ことが「原因」で、
「大野先生が、タカシを職員室に呼び出す」という「結果」となっています。
そして、「大野先生がタカシを職員室に呼び出す」ことにより、「長時間の説教を想像した」タカシは、「憂鬱」な気持ちになります。
これが、「因果関係」の繋がりです。
この例文だけでは問題にするには不十分ですが、
仮に、
問)大野先生が、「後で話があるから、放課後に職員室に来るように。」と言ったのはなぜですか。
といった問題があったとしたら、
その答えは、(おそらく)「タカシが朝の会に遅刻したから。」であり、
少なくとも、「タカシが朝、寝坊をしたから。」ではありません。
(もし、タカシが朝寝坊をしたとしても、学校に遅刻していなければ、大野先生はタカシに説教をすることは無かっただろうからです。)
ちなみに、物語文においては、因果関係は文章の前から後ろに繋がっていくとは限りません。
たとえば、例文では、「タカシが学校に遅刻した」原因は「朝寝坊をしたから」ですが、
その「朝寝坊をした」原因は、「夜の2時過ぎまでゲームをしていた」からのようです。
これは、タカシが遅刻をした後の、サトルとの会話の中で確認することができますから、時系列としては過去のことですが、文章としては、後の方になっています。
このように、出来事(現象)の因果関係を追うことは、
物語文の読解にも有効ですが、
国語に限らず、理科や社会などの学習でも、重要です。
たとえば、
「蒸留の際に沸騰石を入れる」のは「突沸を防ぐため」ですし、
「藤原氏が娘を天皇に嫁がせた」のは「天皇との外戚関係になり政治の実験を握るため」でした。
すべての出来事や現象には、その原因・理由があり、
それをセットで理解していくことが、
1問1答だけの記憶や丸暗記にせず、それぞれの出来事や現象のつながりをつかみながら覚えていくポイントです。
お子さまが「因果関係」を意識していくために
学習を進める際に「因果関係」の意識が大切であることをお伝えしましたが、
「因果関係」の視点は、どのようにして身につけていくことができるでしょうか。
それは、学習の際のみならず、
日常生活においても、「なぜ、そうなったのか?」を、確認していくような質問をしていくことです。
たとえば、前述の「タカシ」の例ではないですが、
「朝、寝坊をした」といったようなアクシデントは、日常でも起こりえます。
その際に、
「ほら、昨日おそくまで起きてたからじゃない。」と言うのは簡単ですが、
そこを、あえてお子さまに、
「なんで朝起きれなかったと思う?」
と、考えてもらう習慣をつけるようにします。
「なぜ、そうなっているのか」を考える癖があることで、
学習の際にも、「なぜ?」をベースに、ものごとの因果関係を掴んでいくことができるようになるのです。
ぜひ、日常生活の中でも、「なぜ?」をたくさん使って、「因果関係」の視点を育てていってください。
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