かけざんの立式における素朴な疑問

今回は、かけざんに関する、こんな問題を題材に書いていきます。

 

問題)サクランボが、ひとふさに2個ずつついています。6ふさでは、何個のサクランボがあるでしょうか。

 

この問題、かけ算を使って解くことができる問題で、

答えは「12個」が正解ですね。

 

ですが、ここで問題となるのは、

その答えを出す際の「式」についてです。

 

 

2×6? 6×2?

 

このような問題の答えを求めるかけ算の式は、

 

「2×6」でしょうか?

それとも、

「6×2」でしょうか?

 

どちらも、答えが12になるかけ算ですが、 

この問題のかけざんの式について、正しいのは、次のどれでしょうか。

 

①「2×6」が正解(「6×2」は間違い)

②「6×2」が正解(「2×6」は間違い)

③「2×6」でも「6×2」でも、どちらでも正解。

 

 

 

これは、小学校2年生の算数の問題ですが、

むしろ、大人になればなるほど、逆に難しく感じてしまうかもしれません。

 

 

正解は、

①「2×6」が正解(「6×2」は間違い)です。

 

 

なぜ、「6×2」は間違いなのでしょうか。

そもそもの、「かけ算」のスタートから考えてみましょう。

 

小学校2年生で、初めてかけ算を学ぶときのことを、考えてみてください。

かけ算を学ぶ前の段階では、

先述の「サクランボ」の問題を、どのように解けば良いでしょうか。

 

「かけ算」を使わずに、問題を解く方法があります。

 

それは、足し算を使って、

2+2+2+2+2+2=12

と、計算をする方法です。

 

つまり、2を6個たすことで、答えを出すことができました。

 

かけ算は、この「□を○個分」たすという計算を「□×○」で表す、というルールで式を作っています。

 

先ほどの「サクランボ」の問題では、

2を足していく計算をしているので、

「□×○」の「□」の側、つまり左側に「2」が入ります

 

「×○」には、「○個分」や「○倍」という意味があります。

 

「2×6」の反対の「6×2」だと、

「6️+6」「6個が2つ分」という意味になってしまうので、

この式は間違い、ということになります。

 

 

「でも、計算の結果が同じだから、どっちでもいいんじゃない?」

 

こんな意見も、どこからか聞こえてきそうです。

 

確かに、小学校の後半で、かけ算の「計算」を進める際には、

「□×○=○×□」(かける順番を変えても答えは一緒)ということを学習しますし、

 

中学以降の数学で「文字式」を作る際には、

係数は左で文字は右、となるので、

たとえ、「1個a円のリンゴを3個買った時の代金」の立式が「a×3」でも、文字式で表す時には「3a」となります。

数学の文字式を作る際は、計算の順番は、意識しなくなっていることでしょう。

 

そういったことを考えたら、

「結局、かけざんの順番がどっちでも答えが同じなのだから、答えがわかれば式なんてどっちでも良いでしょう?」

 

そんな声があがるのも、まぁ、もっとものような気もします。

 

 

ただし、

小学校2年生の時点で、

「かけられる数(1当たり量)」と「かける数(何個分/何倍)」の区別を意識する「視点」を持つことが、

のちの算数学習において活きてくることは、あまり気づかれていません。

 

たとえば、高学年の算数学習において難関となる問題のひとつ、

「割合」の学習を進める際に、

文章題に書かれているのが「比べる数」「もとになる数」「割合」のどれを指しているのか、を把握して式を考える必要があります。

 

これは、小学校2年生の「かけられる数」「かける数」を見極めることと比べると、

明らかに、難易度が上がっている問題です。

 

小学校2年生の「かけ算」の学習の際に、

文章題に書かれている値について「かけられる数」「かける数」の区別をする視点を身につけておくことが、

文章題を意識しながら読むことにもつながりますし、

のちのち、より複雑な文章題に取り組む際にも役立つ、土台の力になるのです。

 

 

ですから、

かけざんの立式において「かけられる数」×「かける数」の順番を意識することは、

たとえ、それがどれだけ「形式的だ」と批判されるようなことがあったとしても、

たいへん有意義なことである、と考えています。

 

学校のテストで、かけ算の式が逆さまになって、「バツ」になってしまった、ということがあった時には、

「かけ算には順番があるんだね」ということを、親子で確認してみてください。

 

 

文章題において、「かけられる数」と「かける数」を明確に切り分けるコツ

 

では、文章題において、かけ算の「順番」を間違えないようにするには、どうすれば良いのでしょうか。

 

非常に、わかりやすい方法があります。

 

それは、かけざんの文章題の中の数字の「序数詞(単位)」に着目する、という方法です。

 

たとえば、先ほどのサクランボの問題を例にとると、

 

2(個)×6(ふさ)=12(個)

となります。

 

サクランボの「2(個)」については、

正確には「2(個/ふさ)」という意味なのですが、

小学2年生の時点では、「1当たり量」を考える時の分数表現を理解するのは難しいですから、

文章題の記載をもとに、「2(個)」としておいた方が理解がスムーズです。

 

 

かけ算の式の左側、つまり「かけられる数」につく数え方(単位)は、

「答え」の数え方と同じ方の値です。

 

サクランボ問題では、

『何「個」のサクランボがありますか。』

とサクランボの個数を聞いていますから、

かけ算の式の左側には、「6(ふさ)」ではなく「2(個)」を入れたら良い、ということになります。

 

これも、ルールがわかって、コツを掴めば、

100発100中で、正解することができるようになります。

 

かけ算の立式の順番は、戸惑うお子さまも多い部分ですが、

ぜひ、コツをつかんで、正しく式を作ることができるようにしていきましょう。

 

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藤田和彦